両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
これ以上、結朱さんを追い詰めるのはよくない。
彼女が私みたいに弾けなくなったら―――そう思うと、庇っていた。

「私は大丈夫だから」

あんな素敵な愛の夢を演奏した唯冬に酷いことをして欲しくない。

「そうか……わかった。じゃあ、楽譜選ぼうか」

結朱さんがホッとしたのがわかって、私も安心した。
怒らせると唯冬はとてつもなく怖くなるということがわかった。
音はあんなにやさしいのに―――
唯冬の手を握り、その場から逃げるようにして離れた。
これ以上、ひどいことをさせないように。
皮肉にも酷い演奏のせいで人の姿はまばらになり、人の目も少なかった。
店員さんはがっかりしたように黙って離れていった。
虹亜の姿はもうない。
結朱さんと友達じゃなかったの?
そう思ったけれど、私にも虹亜はそうだった。
利用価値がないとわかったら、離れていったことを思いだし、きっと今も同じ行動をとったのだろう。

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