蜜味センチメンタル
そのまま他愛もない話をしているうちに、空気がほんのりと朝の匂いに変わっていくのを感じた。
カーテン越しに射し込む光が少しずつ濃くなる。
それを見て、羅華がゆっくりと瞬きをした。

「そろそろ起きよっか」

そう言われて、頷いた。
けれど那色は余韻を引きずったまま体を起こしかけては、また毛布の中に沈み込む。
もう一度その華奢な身体に手を伸ばし、ぬくもりを分け合うように抱きしめた。

「寒い……」

「ちょ、私まで巻き込まないでよ…っ」

呆れたように言う羅華の声に、くすっと笑う。
柔らかな髪を指先で撫でながら、毛布の隙間から覗いた首筋にキスを落とすと、彼女は小さく肩をすくめた。


「これじゃいつまで経っても動けないよ……」

「いいじゃないですか。休みなんだから」

「……」

無言のままの羅華に、からかいすぎたかと一瞬思う。けれど、返ってきたのは朗らかな声だった。

「……そうだね…」

そう言って頬を擦り寄せてくる。
素直になった途端にこの甘え方。

——かわいいにもほどがある。

ますます離れられなくなる。
この、あざとくて罪な悪女を、一体どうしてくれようか。

「……ねえ、羅華さん、年末はいつまで仕事ですか?」

ふいに那色が尋ねた。

「…29日までだけど」

「じゃあ、年末年始の予定は?」

「たぶん…三が日までは実家で過ごすと思う」

「そっか……」

自分でもわかるくらい残念そうに揺れた。
それに気づいたのか、羅華がふっと顔を上げて笑う。

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