蜜味センチメンタル
乾いた言い方に、少し肩が竦んだ。
けれど大和は、グラスに静かにジュースを注ぎながら言葉を続けた。
「でもお前、いつまでも話さねえってワケにはいかないだろ?春からは正式に会社に入るし……何より——」
大和は一度言葉を止め、那色を見据える。
「お前、彼女に本気なんだろ?」
その言葉に、ようやく口が動いた。
「……うん。本気で好きだよ」
そのひとことに、大和はようやく満足そうに小さく笑った。
「なら、余計に隠してる場合じゃねぇぞ」
「…分かってるよ……」
那色は、グラスのジュースを一気に飲み干した。
——分かってる。けど、怖いんだ。
話すことで彼女の顔が曇るんじゃないか。
受け入れられなかったらどうしよう、という恐怖が喉に絡んで言葉にできない。
けれど、ふと胸の奥から、本音が浮かんできた。
「……どんなふうに思われても、自分の言葉で話すよ。…全部、僕のことも、家のことも、兄さんのことも。彼女が戸惑うようなことがあっても、それでも向き合いたいって思ってる。好きになった責任は、僕のものだから。……ちゃんと、全部背負うよ」
その言葉に、大和はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
「それだけ覚悟決めてんならいい。口出して悪かったな」
「……いいえ」
「俺の事も含めて話していいから、言うタイミングはお前に任せる」
グラスを置いて、大和は那色の方に視線を向けた。
「何事も、信じる前提で始めなきゃ、恋愛なんか続かねぇからな」
その言葉が、那色の胸の奥に深く沁みた。
自分が逃げずに向き合えば、きっと彼女は受け止めてくれる。そんな希望を抱きながら、那色はそっと目を伏せた。