蜜味センチメンタル
「……しかしお前、羅華ちゃんが相手なら、しっかり掴んでおかねえと後悔するぞ。お前が知らねえだけで、あの子かなりモテるからな?」
「なんであんたがそんな事知ってるんですか」
「そりゃあ、俺はお前より付き合い長いし?彼女から色んな相談をされるくらいは信用されてるし?」
「…チッ」
あからさまに不機嫌な顔をする那色に、大和はくつくつと笑った。
「まあ、頑張れよ。元カレでも出てくるようなハプニングにでも遭って、泣きついてきたら……手助けくらいはしてやるよ」
「フラグになるからやめろ。てかあんた、絶対この状況楽しんでるだろ」
「当たり前じゃん。女に振り回されてるお前なんて相当レアなんだから」
そう言って、大和は空になったビール缶をゴミ箱に放り込んだ。
「さて。新年を前にひとつ、兄貴から就職祝いってことでいいものやるよ」
大和は懐から取り出した小さな包みを、無造作に那色の前へ滑らせる。
「……何これ」
「開けてみろよ」
包みの中から出てきたのは、シンプルなデザインの名刺入れだった。黒革に、名前のイニシャルがさりげなく刻まれている。
「……あんた、こういうの贈るキャラだったっけ」
「違うな。けど、お前が会社入るってんだから、たまには兄貴らしくしてみようかと。それに…」
大和は新しいビールの蓋を開けながら、こぼすようにぽつりといった。
「俺は、あの家の重みを……背負ってやれなかったから」