蜜味センチメンタル

静かな午後。
やわらかな吐息と唇が重なる音が、世界のすべてを塗り替えていく。

長くはなかった。けれど確かな、恋人としてのキス。離れたあと、那色は揶揄うように微笑んだ。

「新年初キス、いただきました」

「なにそれ」

「夢の中の羅華さんとは何回もしてましたけどね」

「わ、浮気だ」

その言葉に、那色も目を細めて笑う。

「……じゃあ、今日からは、本物の羅華さんがずっとそばにいてくれますか」

「ずっと?」

「ずっとです。食事も、お風呂も、寝る時も、ずっと」

「ちょっと待って。今お風呂って言った?」

「だめですか」

「だめ…っ、というか、恥ずかしい、というか…」

羅華が頬を染めながら視線を逸らす。
けれど那色は、いたずらっぽく笑ったまま肩を竦めた。

「じゃあ一緒に入るのは次回ということで」

「次回って…決定事項みたいに言わないで!」

「はいはい。じゃあ、今日はご飯一緒に食べたし、次は……」

そう言って、那色は体を倒し、ぽん、と羅華の膝の上に頭を落とす。

「えっ、那色くん?」

「膝枕。新年サービスです」

「サ、サービスって……」

「ずっと寂しかったんです。羅華さんに甘やかしてもらいたかった」

囁くような声に、もう拒む理由なんてなかった。

「……じゃあ、ちょっとだけ」


< 146 / 320 >

この作品をシェア

pagetop