蜜味センチメンタル
「…だとしても、鎌田さんがミスしたのは事実なんだし。自分を省みることくらいはしてほしいんだけど」
とはいえ、年が近いからといって気が合うとは別の話。羅華が素っ気なく言うと、鎌田は明らかに不貞腐れてみせた。
「それはすみません。反省してまーす」
欠片もそうは感じられない物言いで画面を切り替える。メール画面が表示されていることから一応仕事をする気はあるようだ。
人知れずため息を吐きながら羅華は再びパソコンと向かい合う。
——月曜から早速憂鬱なんですけど…
あの耳触りのいいジャズミュージックの流れる空間が既に恋しい。
心安らぐダイニングバーの内装を思い浮かべていると同時、先日自分に暴言を吐いた青年を思い出した。
時間が経てば怒りが込み上げてくるかと思いきや、意外とそうでもなく。ただただ、複雑な思いだけが胸に落ちていた。
——私の人生捧げてる、か…
初めて言われた言葉だった。怒りが湧いてこないのは、その言葉があったからかもしれない。那色本人に羅華を気遣うとかそういった意識は無いのだろうが。
それでも、恋愛なんてくだらないみたいに装っておいてのあの言葉は、那色の密かな純粋さが垣間見えたようで不思議な感覚だった。
…だからだろうか。そんな綺麗な気持ちに、押さえ込んでいた気持ちが、無理矢理引っ張り出されるような感覚がするのは。
「原岸さーん。外線1番、お願いしまーす」
隣から聞こえてくるやる気の無い声に思考が削がれる。外線とだけ言われ客先名も告げない鎌田に、羅華はうんざりしながら問いかける。
「…えっと、どなたから?」
「あ、すみません。聞き忘れましたぁ」
「……」
やはり年下はどうも苦手だ。そんな事を感じながら、羅華はゆっくりと電話をゆっくり耳に当て、応答ボタンを押した。