蜜味センチメンタル
——こんな大事なことを……話してくれるなんて
羅華はそっと、那色の髪を撫でた。
その動作に慰めの意味があるのか自分でも分からない。ただ、何かをしてあげたかった。
那色は何も言わなかったけれど、逃げるように目を閉じた。
まるで、子どものようだった。
——ずっと、苦しかったんだろうな
彼の言葉の端々から滲んだのは、誰にも言えずにきた痛みだった。
母を想う気持ち、父への複雑な感情、大和という存在に抱いた戸惑いと羨望と、嫉妬。
それらを抱えて、それでも笑っていた那色の姿を思い出す。
飄々として、何を考えているのか分からなくて、いつも人との距離の取り方がうまくて。
けれど本当の彼は、傷つきやすくて優しい男の子だったのだ。
知れてよかった。
……知ることができて、よかった。
「……ありがとう、那色くん」
ぽつりと、やっと言葉が出た。
「大事なことを、話してくれて」
そう呟いた瞬間、那色の肩がぴくりと揺れた。
きっと、彼はずっと怯えていた。話してしまったら、嫌われるんじゃないか。引かれるんじゃないか。
そんなふうに、思ってたなんて。
羅華は、ぎゅっと彼を抱きしめる腕に力をこめた。
「…嫌にならないですか?」
ふいに落とされた問いに、羅華の胸がきゅっと痛んだ。
その声音には、冗談めかした軽さもなければ、ふだんの皮肉っぽさもなかった。ただ、真剣で、怯えていて、まるで小さな子どもが「見捨てないで」と願うような、そんな声だった。
羅華は少しだけ間を置いて、ゆっくりと首を横に振る。