蜜味センチメンタル

「……どうして、そんなこと思うの?」

「だって、全部……重いでしょ。面倒で、複雑で、僕なんかと関わっても、きっと疲れるだけだから」

掠れる声に、羅華の心が締めつけられる。

「そんなことないよ」

言葉を選ばずに、素直な気持ちが口をついて出た。

「私、知れてよかったって思ってるよ。きみがどんなふうに育って、どんなことを想ってきたのか……少しでも、寄り添えることができるから」

言いながら、自分の胸にふっと芽生えた感情に気づく。

これは決して 同情なんかじゃない。
もっと深くて、温かくて、でもちょっと苦しくなるような気持ち。

——……私、本気だ

この人のことを、本気で好きになっている。

羅華は自分でも驚きながら、そっと那色の背中を撫でた。
その鼓動の速さが、ほんの少しだけ自分と似ているような気がして。

また一歩、彼の心に近づけた気がした。

羅華の言葉に、那色はしばらく何も言わなかった。

ただ抱きしめられたまま、ゆっくりと呼吸を整えるように、彼の肩が上下する。

その沈黙の中に、いくつもの思いが行き交っているのが分かった。迷いとためらいと、それでもどこかにあった、微かな希望。

やがて、那色がそっと顔を上げた。

潤んだ瞳が羅華を映す。ほんの少し赤くなったその目が、あまりにもまっすぐで、羅華は思わず息を呑んだ。

「……ずるいな」

「え?」

那色はかすかに笑った。その笑みは、どこか泣き笑いのようで、羅華の胸を締めつけた。


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