蜜味センチメンタル
そこまで言うと流石に異論が無くなったのか、那色は黙り込む。無言で手を動かし始める那色を、羅華はジッと見つめていた。
「…なんですか」
「何か言いたそうにしてるから、待ってあげてるの」
「……」
「明日来るって言ったのに、今日来ちゃってごめんね?」
「…ほんとですよ。何あっさり来てんですか。あんな言い方されて平気な顔してくるなんて、羅華さんドMなんじゃないですか」
「わ、ひどい。大和さんに言いつけてやる」
「……」
那色はあからさまに嫌そうな顔をして睨み、そして手元を止め、頭を下げて言った。
「…すみませんでした。言い過ぎました」
「うん。じゃあ、許しましょう」
さらりと返す羅華に那色の顔はまたも嫌そうに歪む。嫌われたかなあと思いつつ微笑を浮かべて待っていると、先にミックスナッツの入った小さな小皿が前に置かれた。
「ありがとう」
それらをつまみながら羅華は那色を見つめる。
先週と変わらず美しい顔で、真顔でいると冷たさすら垣間見えて近寄りがたい。
確かに同級生としてならば、那色の纏う空気はお近づきになるには少々恐れ多い気がする。憧れとしておいておきたくなるような、そんな神聖さを感じる。
彼が年上から好まれる理由が、なんとなくわかる気がした。
「…お待たせしました」
考えている間にグラスに注がれたマルガリータが差し出される。再び礼を伝えて羅華が手を伸ばしたところ、何故かそれに那色の手が添えられた。
「那色くん?」
声をかけると重なる視線。その瞳はまつ毛まで長く、顔のパーツの全てが甘い。間近で見る彼の顔立ちは、まさに花の顔だった。
「…先週のこと、言い過ぎた自覚はあります。けど、撤回はしません」
「……」
「過去の幻影に縋るなんておかしいです。羅華さんが大事にするべきは今の時間でしょう。そんなものを言い訳にフラれるなんて、納得できません」