蜜味センチメンタル
「そんな事もあって、学校に居られなくなって転校。彼とも泣く泣く別れた。…未だに未練があるのは、そんな悲劇に浸っていたかったからなのかもしれないね」
辛い過去を乗り越えて健気に頑張るヒロイン。そんなロマンスの主人公のようになりたかったのかもしれない。だって最後には、必ず好きな人が迎えに来てくれて、幸せが待っているから。
「けど、那色くんには痛い所突かれちゃった。先輩を忘れられないのは、きっと私だけ。…だって、こうしてお互い成人しても、会おうって話にもならないもん」
「……」
「…違うね。会えるわけないんだよ。私達は、…私は、誰よりも先輩のそばにいちゃいけない女だもん。…ほんと、ばかだよね。どれだけ先輩を好きでいたところで、…私だけは……」
ただの思い出話のはずなのに、耐えられなかった涙がとめど無く溢れていく。ポタポタと目から落ちる雫がテーブルを濡らし、何度拭えどそれは止まらない。
手で顔を隠し、視界を遮った。
いい年してバーで酒に酔って泣くなんてみっともないにも程がある。
泣くつもりは無かった。ただの思い出話として話すだけのつもりだった。
——それでも。
あのクールな面立ちの中の優しい表情を思い出すたびに、羅華の胸はどうしようもないほどに締め付けられてしまうのだ。
会いたい。だけど、それは叶わない。
それをすれば傷つく人が多いから。向こうだって望んでないに決まっている。
きっと新しい相手を見つけて、前を向いて歩いている。
いつまでも過去に縋って思い出に囚われる、自分などとは違って。