蜜味センチメンタル


完全に酒に飲まれた。4つも年下の大学生の前でボロ泣きするなど醜態にも程だ。

頭に手を当て蹲り羞恥に悶えていると、ガチャリとドアの開く音が羅華の耳に届いた。

「…羅華さん?」

項垂れる羅華を見て那色が近寄る。

「大丈夫ですか?頭、痛みますか」

「あ…いや、その…」

「申し訳ないんですけどここ、鎮痛剤とか常備してなくて。歩けますか?送るんで帰りましょう」

「えっ、帰るって…那色くん、仕事は?」

「店長に事情話して今日は上がりにしてもらいました」

「え!?待って、そんなのダメだよ!もう落ち着いたし一人で帰れるから…っ」

「深夜勤のバイトがこれから来ますし、料理頼む人も少ないからあと数時間くらい二人で大丈夫だって。だからほら、手貸すんで立ってください」

腕を取られて立ち上がる。ヒールを履いているせいか視線が近く、思いの外那色の顔が近くに寄り思わず身じろいだ。

掴まれた手も大きく、目の前にある喉仏や体格差は異性を感じさせる。久しく男性というものを至近距離に感じていなかった羅華は、戸惑いを隠せなかった。

「羅華さんの家、ここから近いんですよね。タクシーは呼ばなくて平気ですか」

「だ、大丈夫…歩いて10分くらいだから」

「そうですか」

那色の手が腕から離れ、熱だけが残る。送るとの言葉通り裏口から外へ出た那色は、時折羅華に道を尋ねながら並んで夜道を歩いた。

街灯は多いが深夜ともあり人通りは少ない。そんな静かな道を、肩を並べて黙って歩いていく。

話すのは分かれ道に差し掛かった時だけでお互い会話は無い。というより、何を話していいかわからなかった。


そうしているうちと10分の距離はあっという間で、羅華の住むマンションが目に入った。

「あ…私の家、あそこなの…」


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