蜜味センチメンタル

──そんな人を、私が独り占めできると思っていたんだろうか。

ポケットからスマートフォンを取り出す。LINEを開いてみると、最後に送ったメッセージにはまだ既読がついていなかった。

[お疲れさま。今週末、もし時間あったら少しだけ会えないかな?]

送ったのは昨夜の22時過ぎ。返事がなくてもおかしくはない時間だった。

でも、それでも一言ぐらい、何か返ってきてもよかったんじゃないか──
そんな思いが胸をかすめて、すぐに打ち消す。

那色は今、きっと忙しい。
入社して間もない中で、大きなプロジェクトに関わっている。責任も重い。立場もある。

そう、全部、分かってる。

だから、気にしすぎなのかもしれない。


通知音が鳴った。

心臓が小さく跳ねて、画面を確認する。
表示されたのは那色からのメッセージだった。

[すみません。今週は無理そうです。式典の準備や挨拶回りでいろいろ立て込んでまして……。落ち着いたら絶対に会いに行きます。本当にすみません]

羅華はしばらく、画面を見つめたまま、指ひとつも動かせなかった。

冷たいわけじゃない。むしろその言葉の奥に彼なりの誠実さがにじんでいるのは分かる。

会いたいと思ってくれていることも。無理に言い訳を並べようとしていないことも。彼が彼らしく、精一杯の距離感で返してくれたメッセージだった。

けれど──それでも、寂しさは残った。


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