蜜味センチメンタル
———
式典用PR映像の撮影現場。
都内のハウススタジオに照明とカメラが並び、スタッフがバタバタと動いていた。
空気は慌ただしいが、撮影現場特有の高揚感が満ちている。
羅華は進行表を手に、控えめに場の端から全体を確認していた。
この日撮影するのは、司会者・嘉島藍良の紹介カットと、冒頭ナレーションの収録。
そして数分後──彼女は現れた。
スタッフの一人が「嘉島さん、入りまーす」と声を上げる。それと同時に、場の空気が少し変わったのが分かった。
スーツのシルエットを柔らかく整えた白のパンツスタイル。ブローの行き届いた髪、完璧な笑顔。
まるで画面の中からそのまま抜け出てきたような、“プロの顔”。
——変わってない。いや、変わっているのかもしれない。
けれど羅華の中で感じたものは、あの日の教室で中心にいた少女の記憶そのものだった。
藍良は挨拶も立ち居振る舞いも完璧で、撮影スタッフやクライアントの担当者ともすぐに打ち解けていた。
ナレーションの語り口も安定していて、現場はどこか賞賛と安心に包まれていく。
遠くに感じる。そのくせ、やけに近く、肌の奥に触れてくる。
カメラチェックの合間、スタッフが場所を移動していたほんの一瞬。
藍良が、まっすぐこちらに向かって歩いてきた。
「……あら、お久しぶり」
柔らかく、何もなかったような微笑み。
でも、その目だけはまったく笑っていなかった。
羅華は、一瞬で心が凍るのを感じた。
式典用PR映像の撮影現場。
都内のハウススタジオに照明とカメラが並び、スタッフがバタバタと動いていた。
空気は慌ただしいが、撮影現場特有の高揚感が満ちている。
羅華は進行表を手に、控えめに場の端から全体を確認していた。
この日撮影するのは、司会者・嘉島藍良の紹介カットと、冒頭ナレーションの収録。
そして数分後──彼女は現れた。
スタッフの一人が「嘉島さん、入りまーす」と声を上げる。それと同時に、場の空気が少し変わったのが分かった。
スーツのシルエットを柔らかく整えた白のパンツスタイル。ブローの行き届いた髪、完璧な笑顔。
まるで画面の中からそのまま抜け出てきたような、“プロの顔”。
——変わってない。いや、変わっているのかもしれない。
けれど羅華の中で感じたものは、あの日の教室で中心にいた少女の記憶そのものだった。
藍良は挨拶も立ち居振る舞いも完璧で、撮影スタッフやクライアントの担当者ともすぐに打ち解けていた。
ナレーションの語り口も安定していて、現場はどこか賞賛と安心に包まれていく。
遠くに感じる。そのくせ、やけに近く、肌の奥に触れてくる。
カメラチェックの合間、スタッフが場所を移動していたほんの一瞬。
藍良が、まっすぐこちらに向かって歩いてきた。
「……あら、お久しぶり」
柔らかく、何もなかったような微笑み。
でも、その目だけはまったく笑っていなかった。
羅華は、一瞬で心が凍るのを感じた。