蜜味センチメンタル
どこを取っても、不完全で、不器用で、弱い自分。
仕事でも、恋でも。いつも誰かの背中を見ているだけ。
那色にも、藍良にも。彼らと並ぶには足りないものだらけで。自分自身が、小さくて、頼りなくて、情けなくて。
——何も、誇れるものなんてないのに。
それでも、那色を好きになってしまった。彼の隣で、歩きたかった。過去を忘れたふりをして、前を向いたつもりだった。
けれどほんの少し触れただけで、それは全部簡単に崩れてしまった。
「…っ」
羅華は小さく嗚咽を漏らしながら、膝をぎゅっと抱きしめた。
涙が静かに頬を伝う。
声は出ないのに、心が泣いているのが分かる。
——こんな自分、もうイヤだ……
暗い部屋の中。灯りひとつない静けさのなかで、ただただ自分の存在のちいささをかみしめながら、羅華はそっと目を閉じた。
それでも夜は、容赦なく流れていった。