蜜味センチメンタル
言うだけ言って、羅華はコンビニへ入る。
見慣れた店内を進みすっかり種類の少なくなった弁当の棚の前でどれにするか悩んでいると、那色が隣に立ち声をかけてきた。
「本当にいいんですか」
「うん。その代わり、場所を提供するから今日バイトを早退させちゃった借りはナシってことにしてね」
「……」
「あ…でも待って。そういえば私今日の代金払ってない…」
「お気になさらず。今日の分も僕につけときました」
「えっ、それはごめんなさい…じゃあここのお金は払うよ」
「お気遣いなく」
「でも、」
「羅華さんが勝手に話しだした事とはいえ、泣いてる女性に金出せって言えるほど神経図太くないんで」
「…嫌味だなあ、もう」
そう言ってため息混じりにその場を離れ、羅華は場所を移す。弁当に食べたいものが無かった為低糖質のシーフードのカップ麺を取り、その足で後々飲み直すための酒をカゴに入れる。
色々と忘れたい事が多過ぎて、酒に頼らねば今日は眠れない気がした。
そのまま先に会計を済ませ、入り口付近でスマホを確認する。
時刻は丁度22時を半分過ぎたところで、終電はまだしばらく大丈夫そうだ。最悪それを逃しても大和に連絡を入れればいい。閉店時間までには那色を送り出せるだろう。
そう考えていると、次いで会計を終えた那色が寄ってきた。
「結局肉まんは買ったの?」
「いえ。弁当にしたのでレンジ貸してもらえますか」
「うん、分かった」
じゃあ行こうか。そう言ってコンビニを出て数メートル先にあるマンションに入り、7階へ向かう。エレベーターを降りて部屋の前に到着すると、鍵を取り出し鍵穴に差した。
ドアを引き先に入りながら「どうぞ」と短く後ろに声をかける。
靴を脱いでスリッパに履き替えたところで、客用のスリッパがない事に気付いた。