蜜味センチメンタル


「ごめん那色くん、スリッパ無いからそのままで…」

振り返ると、先程までと違う視線の高さに驚く。7センチヒールで底上げされていた高さ分低くなり、那色の顔を見るのには視線を上げなければならなくなった。

意外と身長差があることを知って拍子抜けしていると、那色は少しだけ身を屈め視線を合わせてきた。

「…羅華さんって、こうして見るとイメージ違いますね」

「…ど、どういう意味かな、」

聞き返しながら、羅華は一歩後退する。

「単体で見ると背高くて大人っぽく見えてましたけど、意外と華奢で小さいんだなって」

「…小さくはないでしょ…165はあるし、女の中では高い方だよ」

「僕よりは小さいです。それに、メイク落とすと顔の印象も変わりますね」

そう言って那色は顔を寄せ、微笑を浮かべる。


「今の羅華さんは、なんだか可愛いらしいです」

「……」

ぽかんと、羅華は口を開いたまま反応を忘れる。口説き慣れた男はこれほど自然に可愛いという単語を出せるものなんだと、女性慣れした男の脅威を痛感した。

言わずもがな、那色は顔がいい。しかも羅華が出会ってきた男の中で一番の美形と言っても過言でない。

深入りしない方が良いと分かっていても、動揺してしまうのは、どうしようもなかった。

そんな気持ちからも那色からも目を背ける為、羅華は咄嗟に顔を逸らした。

「…とりあえず、いつまでも玄関にいないで入ろう。レンジ使うんだったよね?そこにあるから、好きに使って」

踵を返し、羅華は中へ進む。

1Kのマンションなので部屋とキッチンに仕切りがあり、玄関を抜ければすぐにキッチンスペースが目に入る。

羅華は先にシンクの前に立ち、手を洗う。濡れた手をタオルで拭きあげていると、那色は靴を脱ぎ、ゆっくりと家の中へと足を踏み入れた。

「ねえ、羅華さん」

「…なに?那色く、」


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