蜜味センチメンタル
「そんなもんですよ。人の心なんて、所詮」
吐き捨てるような言葉を吐き、那色は更に顔を寄せる。
「惚れた腫れたは当座のうち、ってね。どれだけ盛り上がろうが、心変わりなんて一瞬なんですよ」
「……」
「だから、ね?羅華さんも今のこの瞬間の気持ちに素直に従っちゃいましょうよ」
白亜の指が頬に触れ、艶かしく輪郭をなぞる。
認めたくない。それなのに、抗えない。
受け入れるべきか、拒絶すべきか。決められないうちに距離は縮まり、そして、遂には再び重なってしまった。
「…んっ…」
漏れ出る声と共に後ろに倒される。フローリングの床に頭が付きそうになった時、那色の手が添えられ打ち付けられる事なく落ちた。
そのままひとつに束ねていた髪が解かれオリーブベージュの髪が床に散らばる。
その間にねじ込まれた那色の舌が羅華の口内を犯す。次第に絡められた舌は解かれ、唇が首筋を這う。
いつの間にか移動してきた手が羅華の胸を柔く揉みしだき、ぞくりとした感覚に羅華は身を捩った。
徐々に下へと向かうリップ音が耳につく度に体が強張っていく。恐怖と罪悪感、一体どちらが自分を支配しているのか分からない。
嫌じゃない。それが、嫌だった。
快感が湧き上がり、混乱と色情で脳内はぐちゃぐちゃに入り乱れて次第に罪悪感が溶けていく。
確かに身に刻み込んでいたはずの、焦がれてやまなかった人の顔や声の記憶が薄れていくのを感じた瞬間、堪らない悲しみに襲われ羅華の目から涙が落ちた。
「——、」
無言のまま、胸元まで下りていた唇が静かに離れる。その頃には羅華の視界は涙で歪み、那色の表情は全く分からなくなっていた。
けれど自分を見つめる那色の視線だけは、しっかりと感じていた。
「…そんなに泣かれたら、無理矢理犯してるみたいな気分になるんですけど」
見下ろしたままそんな台詞を冷たく吐き出し、那色は押し倒していた体をあっさりと起こした。
「興が削がれたんでやっぱ辞めます。泣いてる女を抱くのは趣味じゃないんで」
「……」
「後から合意じゃなかったとかぐちぐち言われるのも面倒だし、別に性欲持て余してる訳でもないですしね」