蜜味センチメンタル
少しばかり苛ついたように言う那色は首の後ろを押さえながら頭を落とし、一度深く息を吐く。
「起きれますか。すみませんね、無理やりキスして押し倒して」
「……」
「手、貸しましょうか」
返事を待たずに那色は手を差し出す。微かに震えながらそれを取ると、言葉通り体を起こすのを手伝ってくれた。
「那色く、」
「無理に何か言わなくて結構ですよ。…だけど、この際なんでひとつだけ質問に答えてください」
片膝を立て、那色はガラス玉のような瞳で見つめて問う。
「羅華さん、元彼の男とはどこまでヤッたんですか」
「…は?」
真面目な顔をして何を聞いてくるんだと思った。けれど那色の表情からは、揶揄いの色は一切感じない。
「キスの時の息の仕方が上手かったんで。なんとなく、直感で」
「……」
「もう直球で聞きますけど、羅華さん処女じゃないですよね」
本当に直球過ぎやしないか。何故そんなことを言わねばならないのかと思わないでもないが、答えるまで解放する気は無いと見て取れる。
気まずさから羅華は胸まで下りた髪に触れる。少しばかり視線を逸らし、耳を熱くしながら質問の答えを返した。
「…那色くんが勝手に処女って決めつけてきただけで、私はそんな事ひとことも言ってないよ」
「……」
「どうしてそんなこと聞くの」
言い方を真似たのは、せめてもの反抗心だった。このまま流されてしまう事が恐ろしく、 どうにかして那色の興味を逸らしたかった。
「いえ別に。ただの確認です、これからの為の」
「これから…?」
意味が分からずそう返せば、微笑を携えた那色が言い放った。
「羅華さんのセカンドバージン、僕にください」