蜜味センチメンタル

どういう反応が正解か、まるでわからなかった。ドン引きするか、赤くなりながら怒るか、頬を染めて俯くか。どれでもない気がして、ただ体を固くするしかなかった。

「まさか女性の方から拒絶される日が来るなんて思いもしてなかったんで、僕の中では革命でした」

「…なに、それ」

普通に最低だし反応に困る。苦虫を噛み潰したような顔を向けるも、那色はどこまでも涼しい顔で言った。

「じゃあ言い方を変えます」

「じゃあって…」

「羅華さんの心が欲しくなった。…そう言ったら、揺れてくれますか」

「……」

声を発さない羅華に、那色はにこりと笑う。

「と、いう訳で。これから距離詰めていきたいんで手始めに羅華さんの連絡先、教えてください」

手のひらを上に向け、おもむろに那色は手を差し出す。繊細かと思っていたそれは指も長く全体的に大きく、間違いなく男性の手だった。

「えっと、」

「ああ、スマホはカバンの中ですか?ならちょっと失礼しますね」

「は!?ちょっ…!」

咄嗟に止めようとしたが間に合わない。那色は無遠慮に羅華のカバンに手を伸ばし、迷いなくスマホを取り出した。

あまりにデリカシーのない行動に、羅華はただ目を見開いてしまう。一方で那色はスマホの画面を一瞥し、鼻で笑った。

「ロックもかけないなんて不用心ですねえ」

「きっ…君みたいに許可なくスマホに触るような人、知り合いにいないからね!」

返して!と身を乗り出すも、那色はスマホをひょいと頭上に掲げてしまう。どうにもならない身長という壁がひどくもどかしい。

そんな羅華をからかうように見下ろしながら、那色はやがて操作を終えると、あっさりとスマホを返してきた。




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