蜜味センチメンタル
扉が閉まると同時、指が絡められた手を引かれる。
そのまま顔を寄せ、流れるようにキスが落とされた。優しさの中にほんの少しの苛立ちが混じったような、どことなく、余裕のない触れ方だった。
「んっ……」
漏れる声もわずかに苦しげで、頬の痛みと、わずかに血の味を感じた。
同じ味を感じたのか、ふと唇が離れると那色が痛々しい表情で、繊細な手つきで羅華の頬に触れた。
「……やっぱり、痛みますか?」
「那色くんが思ってるほど痛くないよ。けど、口の中は切れちゃってるみたい」
「……」
「……那色くん。もしかしてだけど……ちょっと怒ってる?」
「怒ってません。……ただ、納得ができてないだけです」
那色はそう言い、羅華の肩に額を落とした。
肩に重なる額の感触に、羅華は戸惑いながらも、その小さな体温を受け入れた。
「……ごめんね。私のために怒ってくれたのに、私が止めたから…」
問いかけても、すぐには返事がなかった。
那色の呼吸がゆっくりと肩先に当たる。落ち着くように、落ち着かせるように、深く息を吐いてから、ようやく言葉がこぼれた。
「……正直、羅華さんが止めなかったら何してたかわからないんで、それはいいです。……それに許せないのは、僕自身だから」