蜜味センチメンタル
自然と背筋が伸び、目線も真正面を向いていた。
「……私はずっと、自分を閉じ込めてきました。過去のことで人との距離感を見失って、自分を否定する気持ちにがんじがらめになっていました。誰かと関わるのも、何かを望むのも、怖くて仕方がなかった」
ほんの少し息をつく。那色の手が、黙って支えてくれている。
「でも……那色さんは、それでもまっすぐに向き合ってくれました。私のことを見て、知ろうとしてくれて、何も押しつけずにそばにいてくれた」
──そのやさしさが私にとって、どれほど救いだったか……
言いながら、心の奥が軽くなるのを感じていた。
それは、大地に対してというよりも、自分自身への確認だった。
「……私は、那色さんと一緒にいたいです。彼がいいんです。立場や肩書なんかじゃなくて、彼の人柄も優しさも、私のことを受け入れてくれる強さも……彼そのものが、私にとって何より大事なんです」
ほんのわずかな沈黙が落ちる。
大地は羅華を見つめたまま、ゆっくりと頷いた。
そのまま、視線を那色に移す。
「……君はどうだ。那色」
那色の横顔が、わずかに動いた。
「僕は……」
一拍置いて、強い意志の瞳のまま那色は続けた。
「この人といられるなら、家のことも、過去のことも、全部引き受ける覚悟でいます」
「君の人生にとって、それが簡単なことではないと分かっていても?」
「はい。でも彼女さえそばにいてくれるなら、それを苦しいとは思いません」