蜜味センチメンタル
一度だけ羅華を見て、微笑むように目を細める。
その視線の優しさに、胸が熱くなった。
大地は、しばし目を伏せた。
「……そうか」
ゆっくりと息を吐き、大地は少し視線を落とした。
「君たちの言葉を聞いて、ようやく“話”ができる気がしているよ」
障子の向こうの庭に目をやる。
「……私にも、かつて君たちと似たような覚悟をした日があった。だが──それが何をもたらしたかは、今でも答えが出せていない」
声は静かだが、言葉の奥には、年月の重みが宿っていた。大地はゆっくりと、那色に視線を向ける。
「君の母、せつなとのことだ。……そして、もうひとり。君もよく知る、大和のことも含めて」
静寂の中で、ふたたび白椿のほうへ視線を落としながら──
紫水大地は、ぽつりと口を開いた。
「……少し、私の話をさせてくれないか」
低く、穏やかな声だった。命令でも圧力でもなく、ただ“聞いてほしい”という思いが静かに滲んでいる。
羅華と那色は、互いに目を合わせた。
その様子を確認すると、大地はほんのわずかに息を吐き、庭へと目を向ける。
「……せつなは、幼馴染でね。大事な妹のような子だった。物心つく前から一緒にいて、両家の者たちからは当然のように“将来の伴侶”とされていた」