蜜味センチメンタル
「大和もだ。私の息子でありながら正式な跡継ぎにすることもできず、表立って関われなかった。ただ見守ることしかできなかった父親なんて……本当に父と呼べたのか、自分でも分からない」
羅華は、隣で微動だにしない那色の横顔に目をやる。
「……それでも私は、ふたりを諦めきれなかった。せつなとの家庭と、十和子への想い。その狭間のどこかで、全部を保てる道があると、思い込もうとしていた」
大地の声が、わずかにかすれる。
「……誠実には生きられなかった。誰にとっても、私は中途半端だった。責任と感情の間で裂かれたまま、ただ“後継だから”という鎖に縛られていた」
ふと、那色へ目を向ける。
「そして、那色……君にも、私は多くを語らなかった。……語る資格があるとも、思えなかったからだ」
重く落ちる沈黙の中、羅華は大地の言葉に込められた長い葛藤と、誰も救えなかったという悔いを感じ取っていた。
「それでも……」
静かに言葉を切ると、再び目を閉じて、ひと呼吸置く。
「それでも私はふたりの息子を、大切に思っている。都合がいいことは百も承知で、大和も、那色も、私にとっては順番も血も関係なく、かけがえのない息子だ」
そして、那色をまっすぐに見据えた。
「……だからこそ、那色には、私と同じ轍を踏んでほしくない」
那色がゆっくりと息を飲む。