蜜味センチメンタル


「これ、原岸さんの企画ですよね?」

側に置かれたデータ確認用のパソコンに目を落としながら、ぽつりと蓮水が言った。

「正確には少しだけ。加藤さんから引き継いだあと、素材を見ていく中で今期のパッケージに合わせた方向性を少し調整しました」

「なるほど」

蓮水は静かに頷き、それからふたたび視線を羅華へと戻した。

「今回であなたが優秀な人だと分かって安心しました。実は、レグナスさんに大事な仕事をお願いしようと思っていたところなんです」

「大事な仕事…ですか?」

「原岸さん、この後少しだけお時間いただけますか?」

この後はすぐに帰社する予定だったが、クライアントからの申し出を断る選択肢はない。羅華はすぐに「大丈夫です」と頷いた。

「では少し、場所を変えましょう。スタジオ内の部屋をひとつ借りて、そこでお話します」

「承知しました」

羅華はスタッフに声をかけ、控室を一室借り受けると、蓮水と並んでその部屋へと向かった。小さな会議用のテーブルを挟んで向かい合い、ふたりは席に着く。

「早速ですが、ざっくりお話させてください」

席につくやいなや、蓮水が切り出す。

「来年で、弊社は創業70周年を迎えます。……ご存知でしたか?」

「いえ、初めて伺いました。それは、おめでとうございます」

「ありがとうございます。それでその節目に合わせて、記念パーティーとブランド施策を企画しています。業界関係者をお招きする、やや大きめの式典になる予定です。会場は、都内のホテルを検討中でして」

蓮水は言葉を区切り、少し身を乗り出した。

「その広報まわりについて、レグナスさんにお願いできればと」

「広報……というと、映像でしょうか?」

「はい。主には会場内で流す記念ムービーの制作と、それとは別に周年施策の一環で、短期キャンペーンも考えてます。記録じゃなく、印象に残るものを作りたいんです」

そう言って蓮水は少しだけ表情を緩めた。

 
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