蜜味センチメンタル


Stratosを起用したCM撮影は、思っていた以上の仕上がりとなった。

撮影の数日後に制作会社から届いたラフカットを送ると、蓮水からは直々に感謝の言葉が届いた。

「ぜひ、周年記念式典の企画も」と、メールの最後に追記されていた。そして正式な依頼が舞い込んだのは、まさにその翌日。

外回りから社に戻った羅華は、シスイ食品からの正式な式典受注が決まったという知らせを受け、早速案件の資料に目を通していた。


少しずつ年末の気配が近づく中で、仕事はますます慌ただしくなっていく。

ふと手を止め、スマホを手に取る。日曜日のデートを最後にここ数日、まともに確認できていなかったLINEの通知がいくつかたまっていた。

それらは全て、那色からのものだった。

[今日寒すぎません?ついにニット出しました]
[羅華さんは元気ですか]

羅華は、スマホに指を走らせる。

スクロールした先の最後に来ていた一文に、羅華は胸を鳴らした。

[写真なんかより、やっぱり本物の羅華さんに会いたいです]

その下には、あの日撮ったであろうアフタヌーンティーセットを前にした羅華が映った写真が載せられていた。

お世辞にも良い顔とは言えない表情の自分の姿に、恥ずかしくなる。

時刻は18時を少し超えたところで、お店の開店にはまだ少しある。少しだけ期待しながら、羅華は返信を打った。

[その変な顔した写真、消してよ]

そのメッセージには、すぐに既読がついた。

そしてすぐ、そっぽむいた猫のイラストのスタンプが送られてきた。

「もう…」

そう漏らしながらも、くすりと小さく笑ってしまう。何気ないやりとりが、どうしてこんなにもあたたかいのか。

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