先輩はぼくのもの
ぼくと一緒にいてください
「…なんであんたもいんの?」
「言ったよな?俺も攻めさせてもらうって」
「消えろよ。今すぐ」
うーわ。
空気悪〜。。
「もう!龍弥は今から地元帰るんでしょ!?ややこしい言い方しないで!」
あれから数日経った今日はクリスマスイブ。
事あるごとに付きまとう龍弥だったけど、何かしてきたりなどはなくなった。
あれから【好き】とも言われていない。
今日は想汰くんとクリスマスデート。
想汰くん、朝は少し用事があったようで午後から駅前で待ち合わせ。
そして、龍弥も付いてきたという流れ。
「なんで俺帰らなきゃいけねーんだよー」
「おばさんと前から約束してたんでしょ?仕方ないじゃん」
どうやら、以前からイブの日に家の手伝いを頼まれていたらしい。
「日頃の行いじゃないですか?」
「あ?てめぇやんのか?」
「いいですよ。どうせぼくが勝つだろうけど」
あーもう!
「もういいから!龍弥、電車乗り遅れるよ!?」
ギャーギャーうるさい龍弥を駅に放り込んで、やっと想汰くんとふたりきり。
「やっと消えた」
「…ふっ」
「なに笑ってんすか、先輩」
ここ最近の想汰くんは、いい意味でかっこつけなくなった気がする。
「わたしの前でも言葉遣い悪くなってるよ?」
【素】の自分を出しやすくなってきているのか
「…詩先輩以外には基本こうですから」
自分を取り繕う感じが減った気がする。
ぎゅっ
想汰くんの手を握る。
「イブにデートだよ!楽しみだったんだから」
それは、わたしに両親のことを打ち明けてくれたからなのか
ううん
きっとそれだけじゃない。
田村くんに柳瀬くん、それに龍弥
パン屋さんの店長や想汰くんの周りにはたくさんの人。
すべてが今に繋がってるよね?
ちゅっ
いきなりのほっぺにキス。
「わわわ!想汰くん!!外だよ!?」
「可愛い先輩が悪いです」
わたしは、ふにゃっと笑うこの笑顔を守りたい。
・
・
・
「想汰くん、これ見て!可愛い!」
「そうですね」
「これは!?これも可愛いなぁ」
そんなことを言っている先輩が1番かわいいよ。
先輩が来たいと言っていたレトロ商品が置いてあるお店。
カフェもあって、この後お茶をする予定。
「このチャーム、お揃いで持たない?」
なにそれ
「もちろん」
そんなかわいいこと言ってくれるんだ。
買ったお揃いのチャームを眺めながら、レトロカフェで嬉しそうにお茶をする先輩。
そんな先輩を眺めながら、昔のことを思い出す。
〈女みてーな顔、キモイ〉
〈ちょっとモテるからって調子のってんなよ〉
大嫌いな母親に似た顔。
この顔のせいでいじめられる日々。
だけど
〈は?顔とか関係なくね?〉
アイツだけは違ったんだ。
なのに
〈もう2度と話しかけんな〉
ほら。
やっぱりひとは信じちゃダメだ。
みんな平気な顔して裏切るんだ。
大切なひとを作っちゃいけないんだ。
あれ…
心臓がドクドクする・・・
「ー…たくん?」
詩先輩だけは違うってわかってるつもりなのに
「ねぇー…!」
黒い何かがぼくを覆うとするんだ。
「想汰くん!」
先輩の声にハッとして我にかえる。
「あ…ごめん、どうしたの?」
「それはこっちのセリフだよ。大丈夫?しんどいとか?」
「ううん、なんでもないよ」
最近幸せ過ぎるからかな
こんな気持ちになったことがなかったからかな
知らない感情を知っていくからかな
「あっ!」
ゴソゴソと鞄を漁る先輩。
そして取り出したハンカチでぼくの額を拭いてくれた。
「汗?大丈夫?体調悪いんじゃない?」
ううん、違うよ
「大丈夫ですよ。ちょっと着込み過ぎたかもです」
今が怖いぐらい幸せだから
この気持ちを覆ってしまうほどの恐怖がやってくるんだ。
「先輩、ありがとう」
それもぼくが今までしてきたことへの報い。