先輩はぼくのもの

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あー…寝れなかった。


せっかく幸せなイブだったのに。。


朝7時。
このままベッドにいても寝れそうにないから顔を洗ってとりあえずリフレッシュ。


龍弥は今日の夕方にはこっちに帰ってくるみたい。
想汰くんも呼んでみんなでウチでクリスマスパーティーの予定。
珍しく?想汰くんも龍弥もオッケーしてくれてすごく楽しみだったのに……


部屋に戻るとヴーッとバイブ音がした。


《おはようございます。今日すみません、行けなくなりました。また連絡します》

想汰くんからのメッセージだった。




バタバタバタッ


「詩!?こんな朝早くにどうしー…ってそんな格好でどこ行くの!?」


パジャマに上着だけ羽織ったわたしの格好に、いやそれよりも慌てて出て行ったわたしに驚いてお母さんがなにか言ってたけど、今はそれどころじゃない。



わたし
自分の不安に負けて、想汰くんをまた不安にさせたかもしれない。


昨日の夜、想汰くんの言葉に即答出来なかった。

口だけだ。


7時過ぎ。
だけど、まだほんの少し薄暗い朝。
無我夢中で走って、息切れの中着いたのは想汰くんの部屋の前。


慌て過ぎて合鍵も持ってきてない。


恐る恐るインターホンを鳴らした。



「はい」

数秒して聞こえたのは愛しい人の声。


「…詩です」


わたしの声に返答はなく、少ししてドアが開いた。


「先輩、こんな朝早くどうしたんですか?てか、その格好寒くないですか!?」

思っていた反応と違って、いつも通りの想汰くんに少し戸惑ってしまう。



「あ、、いや…えっと…」

え??
わたしの考えすぎだった?


「寒いしひとまずウチ上がります?」


あ、でもやっぱりおかしい。
目を合わせてくれない。



「想汰くん、昨日…傷つけたよね?ごめんね」

部屋の中に入って立ったまま、前にいる後ろ姿の想汰くんに謝る。


「…何の話ですか?昨日傷つくようなことありましたっけ?」

「わたし想汰くんの言葉に即答出来なかったからー…」


ねぇ、こっちを見てよ。


少しして振り向いた想汰くんは笑っていた。


その笑顔にわたしは何故かゾクッとした。
恐怖の身震いだ。



「やっぱり先輩もそんな程度なんですよね。でも先輩はなにも悪くないです。ぼくが全部悪いですから」


なにを言ってるの?


「みんな口だけ。あっ、でも口だけすらない人ばっかだったから先輩はまだマシかな」



ズキンッ


想汰くんに、こんな風に言われたのは初めてで
それだけで心がねじれるようで苦しくなる。



「待って…」

「ごめんね、先輩。ここまで来てもらったんですが」


「待ってよ…」

「やっぱり帰ってもらっていいですか?」


ここで引いちゃだめだ。


「やだ!!!」


心を閉じないで。


わたしの大声に驚いたのか目を見開いた想汰くん。


「帰らない。言うことなんて聞かないから」

「…意味わかんないですよ、先輩」


俯く想汰くんの手を握った。


「口だけ…うん、口だけになりそうだった。ごめんなさい」

わたしは弱い。


「受け止めるから。絶対に」

だから、あなたの気持ちを聞かせてよ。


次の瞬間、わたしは言葉に詰まった。


「…こんなぼく、、嫌ってよ」


そう言いながら、目の前の想汰くんは泣いていた。



もしかして…


「想汰くん…あの破片、わざと置いてたの?」

わたしが気づくように?

それとも


「…さぁ」


こうなるようになる為?



「最低なんだよ、ぼくは」


やだ、想汰くん


「自分のために絶対先輩を傷つける」


ぎゅうっ!!


泣きながら話す想汰くんを力いっぱい抱きしめた。



あー…なんでわたしって
こうなるまで気づかないかな。



「傷つけてよ!想汰くんとの事なら傷ついたって平気!だから、、だからね…」

わたしまで涙が出てきた。



「お願いだから…ひとりで傷つかないで。“ふたりで一緒に”…だよ」


側から見たらおかしいのかもしれない。
歪なのかもしれない。


せっかくもらったプレゼントを壊されて
怒りだってある
悲しさだってある

言いたいことは山程ある


なのに、今この手を放したら
わたしは一生後悔するってわかるから



「想汰くん、これからもそばにいてください」


今は、少しこのままでいさせて。



わたしたち

ううん、違うな
わたしは

想汰くんに依存してるんだ。


それでもいい。
あなたを失いたくない。



クリスマスの朝

わたしは自分自身の中に

【依存】

というものがあることに
初めて気付いたんだ。
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