【番外編】橘さん、甘すぎ注意です
「お風呂掃除、一緒にやるよ」

「ほんと? 助かる」

着替えを済ませた航太がバスルームの戸を開けると、紗良も袖をまくって手伝う気満々。スポンジと洗剤を手に、ふたり並んで湯船をゴシゴシ。

「ねえ、ちょっとこっち持ってて」

「了解……って、今しかないな」

「は? きゃっ!」

手渡されたバス椅子を受け取った隙に、航太がふいに顔を近づける。紗良は慌てて顔をそらし、スポンジを胸に抱え込んだ。

「やめてよ、掃除中でしょ!」

「いや、手は止めてない。プロの意地だし?」

「意地悪の間違いでしょ……」

ぶつぶつ言いながらも、紗良が浴槽の縁を拭いていると――後ろからそっと抱きしめられる。背中に当たる航太の胸の温もりと、耳元にかかる吐息に、紗良の手が止まる。

「せっかく一緒にいる時間なんだから、スキンシップも取り入れて効率よく」

「なにその理屈……やめっ、ちょっと、くすぐったい……!」

頬にキス、首筋にキス、しまいにはスポンジを奪ってまでキスを狙ってくる航太に、紗良は必死に逃げ回る。浴室の中は、洗剤の香りと笑い声で満ちていった。

「……ほんとにもう、仕事中より手強いんだから」

「当然でしょ。紗良は“特別警護対象”だからな」

「そんな特別いらないーっ!」

ぬれたタイルの上でふたりは転びそうになりながらも、笑い合いながら掃除を終えた。
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