【番外編】橘さん、甘すぎ注意です
料亭を出た帰り道、夜風が心地よく吹いていたはずなのに、紗良の顔はまだ真っ赤なまま、うつむいて足元ばかり見ている。

「……最悪。ほんと、最悪……」

ぶつぶつと小さく呟きながら歩く紗良の手を、航太がそっと取った。

「そんなに落ち込むなよ。あれは……まあ、確かに衝撃だったけど」

「衝撃ってレベルじゃないよ……! 旗野さん、絶対聞いてたし……!」

「だな。あの人の顔、トマトだった」

くすっと笑った航太の声に、紗良はますます顔を伏せる。

「笑わないで……もう、どこかに隠れて生きたい……」

「無理だな。俺が見つける」

「えっ?」

「どこに隠れても、ちゃんと見つけて迎えに行くよ。だから、そんな顔すんな」

そう言って、航太は歩を止めて、紗良の頬にそっと手を添えた。

「紗良が恥ずかしいと思うことでも、俺には全部、愛しいよ」

優しい声音で囁かれ、紗良はたまらず顔を上げる。

「……もう、ずるい……」

「いいだろ。彼氏なんだから」

その一言で、紗良の頬がまたじんわりと赤く染まり、さっきまでの恥ずかしさが、少しだけ和らいだ気がした。
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