私の愛した彼は、こわい人
「ずいぶん派手に暴れたようだな」
「そうでもしないとお前が来ないと思った」
「なんの用だよ」
「お前を、殺しに来たよ」

 クククと、不敵に笑う小野。口角は上がっているのに目は笑っていない、狂気に満ちた表情。
 ああ。こいつ、本物だ。

「お前、オーナーになんてことを!」
「謝れコラァ!!」

 ボーイ二人がキレ散らかすも、小野は返事のひとつもしない。バカにした態度で笑った。
 ボーイたちには落ち着いてもらう。小さく首を横に振り、彼らにアイコンタクトを送った。
 今は冷静に話をすべきだ、と。

「俺がお前ごときに()られるとでも」
「ああ、わかってるよ。簡単にはいかないことくらい」
「なぜ俺の店を知っている?」
「僕はお前にアスカを奪われてボーッとしていたわけじゃない。このキャバクラ店以外にも、お前が経営する二十の店舗の場所も全て知っている」
「なんだと」
「お前の過去も調べさせてもらった。家庭環境は最悪だったみたいだねぇ」 
「……どうやって調べた」
「僕は頭がいいんだよ。執着心も強いと自覚している。尾行もするしコミュニケーション能力も高い。SNSの力だって最大限に利用したんだ」
「……クソが」

 俺は胸中で焦りを感じる。平静を装うのに必死なほどに。

「お前からアスカを取り戻すためなら、僕はなんだってするさ」
< 112 / 192 >

この作品をシェア

pagetop