私の愛した彼は、こわい人
「異常な執着心だな」
「なんとでも言えよ。ホントはさぁ、ベル・フルールに顔を出した方が手っ取り早いかなと思ったんだよ。でもお前がサロンのセキュリティを強化したせいで、アスカに気軽に会えなくなった。超迷惑だよ。最近アスカが通いはじめたBarオアシスにも遊びに行こうと思ったんだけど、あそこも会員じゃないとドアすら開けられないね。本音はこういうキャバクラ店には凸したくなかったんだ。怖い人たちもいるんだろう? まあ、アスカを取り戻すためなら仕方ないかって。今日は来てやったよ」

 抑揚のない口調で淡々と話す小野だが、話の内容は衝撃が続いた。
 アスカの行動範囲まで知られている……。

「アスカをお前に渡すつもりはない。あいつも、お前のところには戻らない」

 俺の言葉に、小野は眉間にしわを寄せる。
 怒りのボルテージがさらに上がっているのが見てとれる。

「お前がアスカを連れ去った日。彼女は怯えた目で僕を見ていた。まるで悪魔にでも遭遇したかのような目で……。しかも、翌日仕事から帰ったら、アスカからこんな手紙が置かれていたんだよ!」

 ──タクトへ
 短い間でしたが、お世話になりました。私はこれ以上あなたと一緒にいることはできません。暴力に怯える日々に耐えられなくなりました。一方的に別れを告げてごめんなさい。さようなら。アスカより──

「僕は手紙を読んで、すごく悲しくなった」
「てめぇがしてきた結果だろ」
「ひとことでいい。アスカに謝りたい。それなのに、お前が邪魔をする。アスカはお前の家にいるんだろ?」
「な」

 畜生めが。そんなことまで知られているのか。
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