私の愛した彼は、こわい人
 DV、モラハラ、さらにはストーカーときた。いい加減、この男に対する嫌悪感と寒気が止まらなくなる。

「出勤のときも帰りもお前がアスカを送迎しているなんてさぁ。ホント呆れるよね」
「なぜそこまで把握している」

 小野は鼻で笑うだけで、その手段を詳しくは語らない。
 なにか隠しているのか。

「わざと僕からアスカを遠ざけるために、ずいぶんと警戒しているみたいだね」
「……は。警戒して何が悪い?」
「おかげで彼女と二人きりになれないじゃないか」
「もう、あいつのことは諦めろ」
「うざいなぁ、お前。僕はただ謝りたいだけなんだよ。ひと目でいいからアスカに会いたい。会いたいんだ」
「だから! お前はあいつに会う資格すらないんだよ!!」

 しつこい。話が通じない。
 我慢ならず、俺は衝動的に小野の胸ぐらを掴み取った。
 怯む様子もなく、ニヤニヤ笑ってこちらを見るイカれた男。

「暴力を振るう気か? 名前を変えても、結局は人間性は変わらないな。菊池リュウ(・・・・・)」 
「……その名前で呼ぶなてめぇ!」
「怖い怖い。いいよ、殴れよ。だけどさあ、僕を殴ったらお前も人のこと言えないよな? 僕はたしかにアスカを傷つけたことはあるけど、お前も僕を殴れば同類じゃないか」

 カッとして、握り拳を握った。
 今すぐこいつをボコボコにしてやりたい。ふざけた真似ができなくなるくらい、痛めつけてやりたい。
 俺の中に潜む凶暴性が理性と戦っている。
 ダメだ。やめろ。暴力ではなにも解決しないんだ。
 俺はもう、菊池リュウじゃない。【神楽ジン】として生きているんだろ。
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