私の愛した彼は、こわい人
「嫌いなわけ、ないじゃないですか……」

 彼の瞳から決して目を逸らすことなく。
 真っ直ぐに、自分の気持ちを伝えた。

「ヒゴロモソウで救われたあの日から今までずっと、私の心の中にあなたがいるんです」

 思いがけないところで再会し、大人になったあなたは「リュウお兄さん」の面影はすっかりなくなっていて。けれども誰かに手を差し伸べる優しさだけは、子どもの頃からちっとも変わっていなくて。
 どれだけ私が嬉しかったか、わかりますか。

「大人になってからも、私は助けられています。私の中であなたがどんどん大きな存在になっていくんです。だからこそ、今回のことも心配で……」

 彼に、再び抱きしめられた。
 強くしっかりと、けれども優しい力で包み込んでくれる。
 どんなことがあっても、この安心するぬくもりが、私は大好きなんだ。

「こんなつまらない問題、俺ならすぐに解決できる。なにも心配はいらない。アスカのことは俺が絶対に守る。そばにいてくれ」

 消え入るような甘い声。彼の告白に、私の胸は途端に熱くなる。
 答えなんて、ひとつしかないよ。

「……そばに、います。いさせてください」

 彼と、見つめ合う。
 今の今まで不安でいっぱいだったのに。彼の強い宣言を聞いただけで、抱いていた憂いなんてあっという間に消え去った。
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