私の愛した彼は、こわい人
「アスカ」
「はい」
「キス、してもいいか」
「……え?」
「ずっと、我慢してたんだ。好きな人と暮らしているのに、なにもできないなんて。いくら俺でも耐えられない」

 瞳の奥を赤く染めて、ジンさんはそんなことを口にした。
 思わず吹き出してしまいそうになる。強面オーナーは、根はとても純粋な人なんだね。

「……いいですよ」
「本当か」
「してください。オーナーと、たくさんキスしたいです」

 彼は頬を林檎のように赤く染めた。そんな照れくさそうに笑う顔もするなんて。知らなかった一面を見ることができて、私はどんどん彼に夢中になっていく。
 静かな室内で、瞳を閉じる、確かめるように、私たちはどちらからともなくキスを交わした。濃厚で濃密な、深い愛情を分かち合うように。

「アスカ」
「……うん?」
「ジンって呼んでくれ」
「ジン……?」
「ああ。アスカには、名前で呼んでほしい」
「ジンさん……」

 慣れない呼び方で少し恥ずかしいけれど、彼が求めるなら私は何度でもあなたの名前を呼ぶ。

「ジンさん。好き。大好き」
「俺も。アスカが好きで好きでたまらない」

 愛を囁きあい、私たちの空間は熱を帯びていく。唇が触れるたびに室内には愛の音が響き渡った。
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