私の愛した彼は、こわい人
「アスカ、大丈夫か? 阿川から聞いたぞ。施術中に気分が悪くなったと」

 ジンさんはベッドルームまで私を運び、横にさせてくれた。
 不安そうな顔をして私の頬に手を添える。
 そんな彼の手を握りしめ、小さく頷いて見せた。

「心配かけてごめんなさい」
「病院、行くか」
「明日もよくならなかったら行ってみます」
「俺が連れていくよ」
「お仕事はどうするんです?」
「休む」

 それは……ダメ。
 病院くらい自分で行ける。仕事と私情を混ぜてはいけないでしょう?
 私が言うと、ジンさんは複雑な表情になる。

「例の件、まだ解決してないだろ」
「そうですね……」

 タクトが執着して、ジンさんのお店に迷惑かけている件だよね。

「一人で病院へ行かせるのはさすがに心配だ。もしアスカの身になにかあったらどうする。明日は俺が病院に連れていくから。午前の用を済ませたらすぐに帰るよ」
「わかりました」

 ジンさんは微笑み、そっと私を抱きしめてくれた。
 心地いい……。
 彼がそばにいてくれるからか、少しだけ体調がよくなった気がする。本当はまだ頭はクラクラしているけれど。
 心が落ち着く。

 ただ──やっぱり食欲がなくて。
 ジンさんが梅のお粥を作ってくれたのに二口しか食べられなかった。それどころか、ご飯の匂いがキツく感じて食べたものを吐いてしまう。
 トイレで項垂れる私の背中をジンさんは擦ってくれる。

「ジンさん、ごめんなさい。せっかく作ってくれたのに」
「いいんだよ。そんなことより、アスカの体調が心配だ。今からでも夜間救急に行くか?」
「ううん。今日はこのまま休んでいたい」

 フラフラして、目まいもして、吐き気がとまらない。
 ……どうして? ジンさんは元気なのに。朝と夜は同じ物を食べているから、もしかして昼食でなにか変な物を食べてしまったかもと最初は思っていた。
 だけど……そういうことじゃない。私の中であるひとつの可能性が頭の中に浮かんだ。 

 ──生理が、遅れている──
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