私の愛した彼は、こわい人
◆
点滴を終え、会計をしてクリニックをあとにした。
点滴のおかげか、今は吐き気や怠さは収まっている。けれど心は沈んだまま。
新宿の街を歩く。ノロノロと当てもなく歩く。
忙しそうに道を行き交うサラリーマン。大きなキャリーケースを転がす観光客らしき外国の人たち。道路を走るたくさんの車。小さな街を覆う巨大なビル群。
いつもと変わらない風景。それが今の私にとっては灰色の世界にしか映らない。
西新宿駅前を過ぎたところで小さな神社を見つけた。こんな大都会に、神社なんてあったんだ。
帰る前、境内に足を踏み入れてそこにあった石段に腰かけて休む。
さなか、鞄から着信音が鳴り響いた。
……ジンさんからだ。
一度躊躇するものの、震えた指で通話ボタンをタップする。
『アスカ? どうして家にいないんだ。今、どこにいるっ?』
焦ったような声。
時刻は午後三時過ぎ。
ジンさん……もう帰ってきたんだね。
「今、西新宿駅近くです」
『駅のどの辺りだ?』
「神社があったのでそこで休んでいます。さっき病院に行ってきました」
『そんな。迎えに行く』
「いえ、大丈夫です。タクシーを拾ってすぐに帰りますから」
『まだ体調がよくないだろ?』
「点滴を打ってもらったら少し楽になりました。心配しないでくださいね」
ジンさんは最後まで心配してくれていたが、私が大丈夫と言い続けると『気をつけて帰って来いよ』と納得してくれた。
ジンさん……ごめんなさい。本当はもう少しだけ一人になりたくて。帰りが遅くなるかもしれません。
点滴を終え、会計をしてクリニックをあとにした。
点滴のおかげか、今は吐き気や怠さは収まっている。けれど心は沈んだまま。
新宿の街を歩く。ノロノロと当てもなく歩く。
忙しそうに道を行き交うサラリーマン。大きなキャリーケースを転がす観光客らしき外国の人たち。道路を走るたくさんの車。小さな街を覆う巨大なビル群。
いつもと変わらない風景。それが今の私にとっては灰色の世界にしか映らない。
西新宿駅前を過ぎたところで小さな神社を見つけた。こんな大都会に、神社なんてあったんだ。
帰る前、境内に足を踏み入れてそこにあった石段に腰かけて休む。
さなか、鞄から着信音が鳴り響いた。
……ジンさんからだ。
一度躊躇するものの、震えた指で通話ボタンをタップする。
『アスカ? どうして家にいないんだ。今、どこにいるっ?』
焦ったような声。
時刻は午後三時過ぎ。
ジンさん……もう帰ってきたんだね。
「今、西新宿駅近くです」
『駅のどの辺りだ?』
「神社があったのでそこで休んでいます。さっき病院に行ってきました」
『そんな。迎えに行く』
「いえ、大丈夫です。タクシーを拾ってすぐに帰りますから」
『まだ体調がよくないだろ?』
「点滴を打ってもらったら少し楽になりました。心配しないでくださいね」
ジンさんは最後まで心配してくれていたが、私が大丈夫と言い続けると『気をつけて帰って来いよ』と納得してくれた。
ジンさん……ごめんなさい。本当はもう少しだけ一人になりたくて。帰りが遅くなるかもしれません。