私の愛した彼は、こわい人
 晩ご飯を二人で食べて、他愛ない話をして、お風呂に入って、同じベッドでタクトと寄り添う。


 夜も更けて、今日も「あの時間」がやってくる──タクトの欲を解消する、闇に包まれた時間が。

 タクトが私を抱くとき。彼の感情はいつも爆発してしまう。

「愛してる。愛してるよ、アスカ」
「……あ、あぁっ。タク、ト……」

 薄暗い部屋の中、タクトの吐息と私の声にならない苦しみが小さく壁に反射する。
 タクトの細長い指が、いつものように(・・・・・・・)私の首を締めつけた。
 ああ。タクト。苦しい。苦しいよ……。
 悶える私を見下ろして、タクトは笑っている。

「アスカ、可愛いよ」
「もっと喘いで」
「苦しんでる姿も綺麗だ」
「最高にそそるよ」
「アスカ。アスカ」

 行為は乱暴なのに、囁き声は愛で溢れている。だから私は、タクトに応えたい一心でその愛を受け取るの。
 タクトは激しく腰を振り続け、果てると私に覆い被さったまましばらく動かなくなる。

「……タクト。愛してる」

 彼の求める言葉は虚しくも、部屋にこもった熱に溶けてなくなった。

 行為後、無性に目の奥が熱くなる。意図せず流れ出た生ぬるい涙は、静かに私の頬を伝って落ちていった。
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