私の愛した彼は、こわい人
 あれから数日が経ち、私は焦りを感じていた。
 レガーロ化粧品が、なかなか売れないのだ。フェイシャルで通うお客様全員にお薦めしたというのに。
 どうしよう……
 タクトが初回のお客様に向けてお試し料金やセット内容を手配してくれたのに。
 興味を持たれる方もいたけれど、パッチテストでアレルギー反応が出てしまい、お試しを断念したり。お試しで使ってみたものの、お肌が痒くなったり赤くなったりして、継続的に使用できなくなったり。
 いつからかこのような事例が出るようになった。なぜ痒みや赤みが出る方が増えてしまったのだろう。
 半月が過ぎた時点で、レガーロ商品は四万円ほどしか売れていなかった。
 悩んだところで解決策が見つからない。
 タクトの協力を無駄にするわけにはいかないよ。

 今日は早番なので、いつもより早くサロンに行こう。開店準備の前にカルテを読み込んで、商品の良いところももう一度確認して……。
 やるべきことを頭の中で整理していると、あっという間にサロン前に到着。
 いつもはシャッターが閉まっているのだけれど。
 今日は違った。
 開いている。しかも鍵まで?
 今日の早番、誰だっけ。阿川店長だったかな。
 疑問に思いつつ、中に入ると。

「来たか」

 エントランスのソファに足を組みながら座っている、ダークスーツの男。
 彼を目にして、息が止まりそうになった。

「か、神楽オーナー。おはようございます」

 いつものサングラスを掛け、神楽オーナーは相変わらず怖い顔をしている。
 なんでこんな朝早くにいるの? まだ、八時前なんですけど。
 店長もまだ来てないみたいだし、コハルは今日遅番だし、パートさんたちは開店間際にならないと来ないし……。
 早く来たことを後悔した。
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