私の愛した彼は、こわい人
 眉間にしわを寄せ、ジンさんはタクトを睨みつけた。

「ゴム付けてなかったのかよ」

 ──こんな台詞を彼に言わせてしまう自分が憎い。酷い。最低すぎる。
 なのにタクトはヘラヘラしていて。

「まあ、してなかったときもあるかな。盛り上がると邪魔になるだろ?」
「クソが。ふざけるな、てめぇ!!」

 ジンさんは勢いよく立ち上がり、タクトの胸ぐらを鷲掴みにした。
 怒りに満ちたジンさんの顔が、すごく怖い……。
 
「ジン、やめなさい」

 カウンターで見守るユウキさんが冷静に言った。

「ここで暴れるのはナシって言ったでしょ。いくらあんたがオアシスのオーナーであっても、あたしは許さないわ」

 注意され、ジンさんは舌打ちをしながら乱雑にタクトの胸ぐらを手放す。
 ドサッと椅子に座るジンさんの目は、苛立ちの色に支配されていた。

「断れなかった私の責任でもあります……」
「そうそう。こういう問題が出るとだいたい男だけのせいにされがちだけどさ、結局はお互いの意思だろ? 僕だけが責められるのはおかしいよ」
「どうせお前が暴力でアスカを従わせたんだろ」
「決めつけは失礼じゃないか、神楽。僕たちはちゃんと愛し合ってたんだよ?」
「ゲス野郎……」

 両手を組み、深く息を吐き出すジンさんは私の顔を見た。震えた声でこう問いかけてくる。

「アスカは、これからどうしたいんだ」
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