私の愛した彼は、こわい人
『あいつが十二の時に、菊池組と敵対してる組織との抗争事件があってね。巻き込まれたジンの母親が、対立組織の組員に殺されたの』
「……え」
『親父は相手の組員を三人も殺しちゃって、警察にパクられたのよ』
「そんな、ことが」
『全部、当時あいつが住んでいた家で起きた事件。ジンの目の前で母親は殺されたのよ。大々的にニュースにもなっちゃったから、あのDV男がその件を知っていたのは過去のニュースを調べたんでしょうね』

 あまりにも惨い過去に、私は胸が引き裂かれそうになる。ジンさんが、そんなつらい経験をしていたなんて。
 もしかして、「新たな人間として」神楽ジンという名前に変えたのは、その事件があったからなの?
 私、全然知らなかった……。彼のこと、なにも知らなすぎた。

『その事件をきっかけに、身内のいないジンはヒゴロモソウで暮らすことになったのよ。あいつ、施設での生活は不満も言ってたけど、そこで出会った自分に唯一なついてくるガキのことは忘れられなかったんですって』

 なついてくるガキ。
 それって……もしかして。
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