私の愛した彼は、こわい人
「君には呆れたよ。結局、神楽の家に居候したままで。あいつとは別れるの? どうなの? お腹の子供はまだ堕ろさないのかい? ホントに一人じゃなにも決められないバカ女だよな、アスカは」

 この人に酷い言葉を向けられても、なんにも感じない。とっくの昔に慣れてしまったから。
 けれど、悪寒はものすごくて。
 ……私がジンさんの家にいたことを、タクトに知られている。お腹の子をどうするのか決めかねていることも、全部知られている。
 ……そうだ。この人はそう言う人だ。どこまでも執着心が強く、あらゆる手段で私たちの現状を調べ、いつまで経っても追いかけてくる。
 どれだけ私が突き放しても、タクトはなにも変わらない。

 裏路地は人通りが全くない。このままじゃ危険だ。
 逃げなきゃ……逃げなきゃ……!
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