私の愛した彼は、こわい人
 一歩二歩、後退りをする。しかし、足が震えてまるで言うことを聞かない。
 逃げたいのに、逃げられない恐怖。
 私の息は、どんどん上がっていく。

「なにしてるの、アスカ。まさか、逃げるの? また神楽に助けてもらうつもりかな」

 顔を歪ませるタクトは、悪魔にしか見えない。
 恐ろしさのあまり、私の心臓は爆音を鳴らし続けた。

「あの男は何度も僕の邪魔をする。最期(・・)くらい、完璧なシナリオで終わらせたいんだ。だから、あいつは助けに来ないよ」

 最期? 最期って、なに……?
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