私の愛した彼は、こわい人
「ジンさんに、なにかしたの……?」
「ふふふ。僕の悪いお友だち(・・・・・・)がトラブルを起こしてくれたんだよね」
「友だちって……?」
「川崎市内を彷徨いてる、チンピラどもだよ。彼ら、菊池組と繋がってる連中らしくてね」

 ……川崎の菊池組って。ジンさんのお父さんが統括する組織のことだよね。
 とてつもなく、嫌な予感がした。

「タクト。そんな人たちとつるんでるの……?」
「神楽のことを尋ね回ってたらさ、すっかり仲良くなっちゃって。ほら、僕ってレガーロの優秀な営業マンだろう? チンピラ相手の取引ははじめてだったけど、金を積んだら僕の要望に答えてくれてさ」
「要望って。なにを企んでるの?」
「ベル・フルールでちょっとばかし暴れてきてくれって、頼んだんだよ」

 一瞬、息をするのを忘れてしまう。
 ベル・フルールって、そんな。
 店長やコハル、スタッフのみんなやお客様の顔が頭をよぎる。

「な、なんで! どうして⁉ サロンのみんなは関係ないでしょ⁉」
「君の職場だよ? 関係あるよ。チンピラの皆さんに暴れてもらうついでに、事実を暴露してもらったんだよ」
「事実って……」

 まさか。

「君が、僕との子を妊娠したことを、スタッフ全員に伝えてもらったんだ」
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