私の愛した彼は、こわい人
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四月一日の午後八時。退院してから一ヶ月以上が経ち、私は少しずつ普通の生活ができるようになった。家事を少しずつ再開し、数時間程度の外出もできるようになった。
今日はだいぶ調子がいい。
私は、ジンさんとベル・フルールを訪れた。
すでに夜のミーティングが終わっていて、スタッフはみんな帰り支度をしている最中だった。
久々に訪れたベル・フルール。癒しの空間に心が安らぐ。
コハルも阿川店長も笑顔で私たちを出迎えてくれた。
「ああ、アスカ。久しぶり! 何ヶ月ぶり!? 超会いたかったよ!」
「鈴本さん、よく来てくれたわね。顔が見れてすごく嬉しいわ」
「ありがとうございます。店長もコハルもお変わりなくてよかった」
二人の歓迎に、胸があたたかくなる。
ジンさんはいつもの定位置にドカッと座り込み、腕を組みながら私たちのやり取りを無言で眺めていた。
この感じ、懐かしいなぁ。
ミーティングでジンさん──神楽オーナー──の厳しい指揮のもと戦略を立てて、お客様ケアの相談をしたり、化粧品販売の促進を話し合ったりしてきた。
過去を振り返り、私は無意識に笑みを溢す。
そんな私を、コハルはなんともいえない表情で見つめた。みるみる涙目になり、よしよしと私の頭を撫でてきて。
「ホントに。アスカ……よく、頑張ったね!」
励ましの気持ちがたくさん込められているひとことだった。
コハルは、四ヶ月前のあの事件を気にしているのだろう。