私の愛した彼は、こわい人
「もしよかったら、そろそろサロンに戻ってこない? 鈴本さんがエステティシャンとしてさらに輝く姿が目に浮かぶわ」

 期待の眼差しで、店長はそう言ってくれた。
 私はさりげなくジンさんに目を向ける。
 相変わらず大胆に座る彼は無言で頷いた。その表情は、どこか柔らかい。
 再度、店長の方に振り返り、私は静かに口を開いた。

「店長、ありがとうございます。光栄です。だけど……私、今日はベル・フルールを辞めるつもりでお話に来たんです」
「……えっ?」

 店長は目を見張った。
 隣で聞いていたコハルも、混乱しているようだった。

「ど、どうして……アスカ」

 私にベル・フルールの仕事を紹介してくれたのはコハルだ。これまで一緒に頑張ってきたからこそ、彼女の困惑した反応を見ると心苦しくなる。
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