私の愛した彼は、こわい人
苦痛な日々を過ごしていたある日。私にとっての「ヒーロー」が現れた。
大人になった今でも忘れない、リュウお兄さん。私より八歳も上の、小学六年生のお兄さん。
『お前ら、なにやってんの』
いつものように物陰で叩かれ、服を脱がされ、触られたくないところを触られていたら、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。
振り返ると、怖い顔をしたリュウお兄さんが男の子たちを睨みつけていたの。
男の子たちはハッとしたように、私をなぶる手を止めた。
私は脱がされた服を震えた手で着直す。
その間に言い合いがはじまり、ついには男の子の一人がリュウお兄さんに手を上げてしまった。
激怒したリュウお兄さんは、次々と男の子たちを返り討ちにしていく。
リュウお兄さんはヒゴロモソウの子どもたちの中でも圧倒的に体格がよくて。
男の子三人がかりで殴りかかろうとしても、まるで歯が立たなかった。
負けた男の子たちは、逃げるようにその場を去っていく。
殴り合いのケンカを見るのは初めてだった。とても怖かった。しかも、自分が原因ということもあってなおさら苦しかった。
『リュウおにいさん』
それでも、私を助けてくれた彼にお礼を言いたい。
『たすけてくれて、ありがとう』
リュウお兄さんはふと微笑んで私にあるものを差し出した。
それは、青い【御守】と記されたものだった。
『この先、つらいことがあってもきっと守ってくれる』
『ほんと? もらってもいいの?』
『いいよ』
『ありがとう、リュウおにいさん!』
──ヒゴロモソウで出会ったリュウお兄さんは、普段は寡黙だけどとても優しい人だった。強くて背が高くて、四歳の私にとって大人に見えた、憧れの存在。
リュウお兄さんからもらった御守りを、私は大切に身につけた。
けれど──施設で過ごしている限り、別れは必ずやってくるもの。
大人になった今でも忘れない、リュウお兄さん。私より八歳も上の、小学六年生のお兄さん。
『お前ら、なにやってんの』
いつものように物陰で叩かれ、服を脱がされ、触られたくないところを触られていたら、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。
振り返ると、怖い顔をしたリュウお兄さんが男の子たちを睨みつけていたの。
男の子たちはハッとしたように、私をなぶる手を止めた。
私は脱がされた服を震えた手で着直す。
その間に言い合いがはじまり、ついには男の子の一人がリュウお兄さんに手を上げてしまった。
激怒したリュウお兄さんは、次々と男の子たちを返り討ちにしていく。
リュウお兄さんはヒゴロモソウの子どもたちの中でも圧倒的に体格がよくて。
男の子三人がかりで殴りかかろうとしても、まるで歯が立たなかった。
負けた男の子たちは、逃げるようにその場を去っていく。
殴り合いのケンカを見るのは初めてだった。とても怖かった。しかも、自分が原因ということもあってなおさら苦しかった。
『リュウおにいさん』
それでも、私を助けてくれた彼にお礼を言いたい。
『たすけてくれて、ありがとう』
リュウお兄さんはふと微笑んで私にあるものを差し出した。
それは、青い【御守】と記されたものだった。
『この先、つらいことがあってもきっと守ってくれる』
『ほんと? もらってもいいの?』
『いいよ』
『ありがとう、リュウおにいさん!』
──ヒゴロモソウで出会ったリュウお兄さんは、普段は寡黙だけどとても優しい人だった。強くて背が高くて、四歳の私にとって大人に見えた、憧れの存在。
リュウお兄さんからもらった御守りを、私は大切に身につけた。
けれど──施設で過ごしている限り、別れは必ずやってくるもの。