私の愛した彼は、こわい人
「では、最後の条件です。お宅には、賠償金を請求させていただきますのでそのつもりで」
「ば、賠償金……?」
「うちのお客らに迷惑かけましたし、今後クレームも来ると思います。不良品を売りつけたサロンだと。コース契約をキャンセルされる可能性もある。まあまあな手間で、うちとしても大損ですよ」
「……賠償金についてはわたし一人では判断できかねます」
「だったら顧問弁護士にでも相談してください。こっちも弁護士用意してますから、あとはそっちでお話しましょう」
「……」

 土屋氏は膝の上で拳を握っていた。その手は微かに震えていて。
 反面、満足げな顔をしてオーナーは優雅にお茶を飲んでいた。
 私はその姿を、呆然と眺めるしかない。

 ──ベル・フルールが長年取引していたレガーロ社と契約を解除した、衝撃的な日。
 これはきっと、神楽オーナーの思い描いていたシナリオだったに違いない。
 私の頭の中は真っ白になった。
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