私の愛した彼は、こわい人
ドアが開いた瞬間、オーナーの手が私の腕に伸びる。優しい力で、けれども強引に手を引かれて。
裸足のまま、外へと連れ出される。
オーナーは庇うようにして、私の前に立ちふさがった。
「お前、レガーロの小野だな? うちの従業員になにしてくれてんだ」
表情は見えない。その後ろ姿を見る限り、オーナーの強烈な怒りが伝わってきた。
「はい? なんのことです?」
「てめぇの怒号が外まで聞こえてきたが」
「ああ。それは、あんたのせいでもありますよ。僕の彼女を無断で連れ回しましたよね」
「はあ? バカかお前は。仕事だ」
「そもそも彼女は今日、休みだったんですよ。それを無理やり休日出勤させやがって。しかも、うちとの契約を勝手に解除した。僕が担当していたベル・フルールとの契約を……お前は……」
だんだん、タクトの口調が乱暴になっていく。息は荒くなり、肩を震わせて。
無意識のうちに私は神楽オーナーの裾を掴み取っていた。
血走った目で、タクトは私を睨み絶叫する。
「お前は僕の女まで奪おうっていうのか。許さない……許さないぞ神楽!」
「さっきからなにを喚いてるんだ、鬱陶しい」
「返せ。返せよ。アスカを返せ!!」
「……待って、タクト」
このままじゃまずい。タクトが暴走すると、取り返しのつかないことになる。
固唾を呑み、私はタクトの求める言葉を並べた。
「誤解だよ。神楽オーナーとはなんにもない。私が好きなのは……あなただけだよ」
「本当か? アスカ」
「……うん。本当」
「だったら、こっちにおいでよ。そんな男のそばにいないで。僕のところに戻ってきなよ」
「……」
私はさらに神楽オーナーの裾を握りしめる力を強くした。
タクトのところへ、戻る。
戻る。……戻る?
戻らなきゃ、ダメ……?
意味のない自問自答。
棒のように、足が動かなくなった。
裸足のまま、外へと連れ出される。
オーナーは庇うようにして、私の前に立ちふさがった。
「お前、レガーロの小野だな? うちの従業員になにしてくれてんだ」
表情は見えない。その後ろ姿を見る限り、オーナーの強烈な怒りが伝わってきた。
「はい? なんのことです?」
「てめぇの怒号が外まで聞こえてきたが」
「ああ。それは、あんたのせいでもありますよ。僕の彼女を無断で連れ回しましたよね」
「はあ? バカかお前は。仕事だ」
「そもそも彼女は今日、休みだったんですよ。それを無理やり休日出勤させやがって。しかも、うちとの契約を勝手に解除した。僕が担当していたベル・フルールとの契約を……お前は……」
だんだん、タクトの口調が乱暴になっていく。息は荒くなり、肩を震わせて。
無意識のうちに私は神楽オーナーの裾を掴み取っていた。
血走った目で、タクトは私を睨み絶叫する。
「お前は僕の女まで奪おうっていうのか。許さない……許さないぞ神楽!」
「さっきからなにを喚いてるんだ、鬱陶しい」
「返せ。返せよ。アスカを返せ!!」
「……待って、タクト」
このままじゃまずい。タクトが暴走すると、取り返しのつかないことになる。
固唾を呑み、私はタクトの求める言葉を並べた。
「誤解だよ。神楽オーナーとはなんにもない。私が好きなのは……あなただけだよ」
「本当か? アスカ」
「……うん。本当」
「だったら、こっちにおいでよ。そんな男のそばにいないで。僕のところに戻ってきなよ」
「……」
私はさらに神楽オーナーの裾を握りしめる力を強くした。
タクトのところへ、戻る。
戻る。……戻る?
戻らなきゃ、ダメ……?
意味のない自問自答。
棒のように、足が動かなくなった。