私の愛した彼は、こわい人
 固い空気の中、店長が自然な空笑顔を作り上げる。

「今月からよろしくお願いします。店長の阿川ナオミと申します」
「先月の売上は」
「え」
「え、じゃねえよ。お前らの名前なんて興味ない。先月の売上と達成率の報告をしろ」
「承知しました」

 店長はカウンターからタブレットを取り出し、売り上げ表を立ち上げようと操作し始める。
 神楽オーナーはカウンター前に備え付けているお客様用のソファにドカッと座り込んだ。足を組み、豪快に両手を広げて背もたれに寄りかかる。

 ……この人。いくらオーナーだからって、態度が大きすぎない?
 唖然として神楽オーナーを眺めていると──ふと、視線がぶつかった。
 なんともいえない顔をされ、じっと見つめられる。
 なに。なんだろう……? 私の顔に、なにかついてる?
 気まずさに耐えられず、私は顔を背けた。
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