私の愛した彼は、こわい人
 違和感丸出しのジュースに釘付けになる私をよそに、会話はさらに繰り広げられる。

「どうせあたしにその子の世話をしろって言いに来たんでしょう?」
「話が早いな。お前んちに泊めてやれないか」
「悪いけどお断りするわ」

 ユウキさんは煙草に火をつけた。オーナーもつられるように吸いはじめる。

「頼む。一晩だけでいい」
「嫌よ! これで何人目だと思ってるのっ? この前は妊娠中のキャバ嬢を匿ってやったわよね」
「ああ、その件は」
「ガキの父親が誰かわからない、育てられない。だから中絶できる病院紹介して連れてってやったのにさ。そのキャバ嬢、礼も言わずに行方知らずになっちゃったし」
「もう連絡も取れなくなったな」
「その前はホストに貢ぎまくって何百万も借金抱えるバカ女もいたわね。あたしが借金の一部を肩代わりしてやったのに、そいつもまたどっかいなくなって」
「あった。あったよ、そんなことも……」
「しかも先月は家出したクソガキをあんたが拾ってきて──」
「ああ、わかったわかった。全部俺が悪かった」
「あんたの連れてくる女はバカばっかり! いくら店の従業員だからって、あたしには関係ない赤の他人なの。これ以上、助けらんないわよ」
「そう言わずにな」
「ホテルにでも泊めれば! あたしの家に厄介娘を居候させるのは今後一切お断り!」

 ユウキさんの勢いに、オーナーは面食らっていた。
 ──どうやら彼は娯楽施設(キャバクラやその他風俗的なお店)のオーナーでもあるらしい。
 娯楽施設が夜の店だらけなのは驚いたけれど、そんなことよりもユウキさんが気の毒だと思った。
 もしかして、ユウキさんは私がここに来たとき「また問題児を連れてきた」って思ったのかも。
 だけど、私は助けを乞うつもりはない。
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